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March 06, 2005

荷風歓楽

愛することは、憎むことを知る始めである。(永井荷風『歓楽』)

「賞賛、実にこれほど麗しいものはない。恋も事業も芸術も、あらゆる美徳も、つまりはこの麗しい声を聞かんが為に生きている」(永井荷風「歓楽」)


月の光も雨の音も、恋してこそ始めて新しい色と響を生ずる ― 永井 荷風 ―(『歓楽』)

 荷風の、『歓楽』 は、結婚を最高と思わず、いつまでも最高の恋を探していくことを人生を最高の生き方としている男の話だ。まあ、つまり荷風の人生の心情をそのまま小説にした物だ。

「最初に見た時とは別の人のようにきちんと、座った形を崩さず、妙に話を途切らせてしまう。じっと見詰める私の眼の、烈しく燃え立つ欲望の光のまぶしさに堪えられぬと云うよう、俯向いた顔を上げ兼ねていた。この沈黙の中に進み行く時間は二人の運命を、二人の気付かぬうちに、その行くべき処まで行かしめねば止むまいと云うよう、あたかも満ちてくる潮の流れの如く、ひしひし二人の身に迫る。私は非常に高まる女の胸の響を聞き得るようにと思った。その響は、もうあなたに身を任している、どうして下さるんです。と私の返事を促す哀訴のようにも聞き取れる。ああ、解き得ない謎、聞き分けられぬ囁き、定まらぬ色の動揺、形なき言葉の影ーーー何たる悶えであろう。私は突然、この発表されない覚悟、声ある如き女の沈黙は、もし此処に一歩を進めたならば、窮鼠却て猫を噛む恐しい防禦の暗示でありはせぬかとも思った。私は実にこの場合、虚心平然として何等の先入的判断に促われる事なく、相手の心理を洞察せねばならぬと思った。自分ながら大分酔っている事が分る。どうかして酔をすっかり醒ましてしまいたい。少なくともこれ以上酔ってはならぬと急った。すると急れば急るほど、私は酔の廻るを覚え、眼がぐらぐらして、身体全体が次第々々に他人のものであるような心持がして・・・・・・遂に意識が失った。判断が消えてしまった。目の前の女は乃ち女である。何等の社会的関係もない。束縛もない。目の前の女は唯だ単に、私が欲望の対象物として忽然現れ出たものをした見えなくなった。酒よ、何時に謝す・・・・・・。」 ーーー永井荷風 『歓楽』よりーーー

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